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2007年12月18日

ホームリバー

ナチュログの「川蜻蛉の舞う渓にて」のKenさんが、
その1コーナーで『短編 釣小説大賞』を開催しておられて、
私も勢いで、「応募するかも」とか言っちゃったんで、
必死にひねりだした応募作品がこれです。

10年くらい前の私の状況を意識して書きました。
でも、その頃は私はFFはやっていなかったので、
フィクションといえばフィクションでもあります。

意識したのは、"A River Runs through It"の雰囲気?
でも、文才がないので、散文調にまとめているうちに
なんか、最近の携帯小説みたいになっちゃいました。

言い訳はこれくらいにして、まあ、ゆっくりと、
ご一読いただけると幸いです。

=============
シュー、シュー…。シュー、シュー…
渓流の音に掻き消されながらラインが出る。
ふわりと落ちたフライは流れを下る。
ドラグがかかる前にラインを上流に送る。

梅雨明け間近の曇り空。緑深き谷間の渓流。
何も考えずにロッドを振りたい。
そう、昔の教えどおりのあのリズムで。
ただ、思いはいつしか走馬灯のように巡る。

思えば、この川に立つのは20何年ぶり?
山里の故郷に戻ってきたのは…10年ぶりか。
親父と釣りに明け暮れた少年時代。
19で親父に旅立ちを告げたのもこのホームリバー。

若い頃からハイカラを気取った親父。
自称カントリー・フライフィッシャーマン。
曰く、「すべてがリズム。すべてがフォーム。」
親子2人で「リズム&フォーム」を重ねた遠い日々。

シュー、シュー…。シュー、シュー…
川は、あの頃と変わったようで、変わらない。
あの淵も、この瀬も。太古からの延長線上の存在。
その住民たちも世代を繰り返すだけ。

「リズム&フォーム」に耐え切れず
田舎を去り、清流のない都会へと発った俺。
「リズム&フォーム」を打ち破るのが俺の役目だと。
黙って頷き、見送った親父。

瀬を流れるフライがいきなり姿を消す。
あわてた俺は、ロッドを闇雲に立てる。
身体に焼きついたキャスティングはすぐに戻っても
「あわせ」は、なかなかブランクを越えられない。

「父、危篤」の急な知らせは、つい先週。
話もできぬまま、今度は親父が逝ってしまった。
葬式を済ませ、おふくろを支え、
そして、見つけたロッド&リール…親父の形見。

持ち主に深く愛でられ、使い込まれた道具。
手に取るとその暖かさが伝わってきた。
そして、その瞬間、耳元に聞こえた。
「すべてがリズム。すべてがフォームだよ。」

翌朝、そうそれは今、俺はここにいる。
梅雨明け間近のあの渓流。
親父のタックルとフライで釣り上がる。
親父と歩いたあの日々のように。

シュー、シュー…。シュー、シュー…

どれほど、釣りあがっただろうか。
気温が上がり、水面から蒸気が上る。
にわかに、あたりは明るくなる。
そして、次のコーナーを曲がる俺の前には…

Home River

木々の枝葉を抜け、霧を引き裂くように
幾つもの光の帯が川面を照らす。
その帯の中で、何百、何千もの蜻蛉たちが
光と風のリズムに合わせて、きらきらと輝く。

そして、蜻蛉たちの織り成すきらめきの中に
俺は見た… 親父の笑顔。
そして、親父の顔は、確かにこう言った。
「すべてがリズム。すべてがフォームだよ。」

笑顔は舞うように消え
川面ではトラウトたちがライズを始める。
俺は何もせず
ただただ、ライズを見守った。


 



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この記事へのトラックバック
2作目の応募作品が届きました!!作者は「秋川ライフ」のjbopperさん公平を期するために、文字の編集等はしておりませんので悪しからずm(__)m写真の添付もしないと言う事にして...
応募作品その2 『ホームリバー』【川蜻蛉の舞う渓にて】at 2007年12月18日 22:19
この記事へのコメント
応募ありがとうございます(^^)b
トラックバック他アップ、こちらでも完了しました。

いやぁ!さすが「文学青年」を自称するだけの事はありますね♪
叙情詩のような風景の描写はお見事だとですよ( ´∀`)ノ

眼をつぶると、美しい渓に向かってキャストする、その姿が浮かんでくるようです!!

シュー、シュー・・・
この音の描写も良いですね♪
Posted by Kawatombo KenKawatombo Ken at 2007年12月18日 22:29
気持ちよく読みきりました。
まさに、端的で歯切れの良い・・・
リズムとフォームのバランスが良かったですよ^^
Posted by EGG at 2007年12月19日 00:55
サブイボが立ちました。
「くめあきら」もしくは「もりもとれお」の声を想像して読むと、もっとサブイボが立った。

現在の渓流を、未来のフライフィッシャーに残し、自分も蜻蛉の姿を借りて現れたいなぁ~と思いました。

こう言う話大好きです。 1票入れます。
Posted by tomo(kawatombo) at 2007年12月19日 10:28
> Kenさん
そこまで言っていただけると久々に文章を真剣に
組み立てる作業をした甲斐があります。

でも、むか~しの文学青年(を志した者)は、アイディアが
乏しいから、私小説に走っちゃうんですよね。これが。

> EGGさん
「リズムとフォーム」でそこまで深読みしてくださって
ありがとうございます。

最初は、タイトルを「リズム&フォーム」にしようかと
ちょっと考えたこともありました。

> tomoさん
そう、ゆっくりと読んでいただけるとすっごくうれしいです。
喜んでいただけて光栄です。
Posted by jbopperjbopper at 2007年12月19日 18:49
jbopperさん、こんばんは。
いろんな方面に才能があるんですね~、びっくりです。
楽しく読ませていただきましたよ。
「すべてがリズム、すべてがフォーム」
いいフレーズですね。
今度どこかで使わせていただこうかしら?ダメ?
Posted by papachan at 2007年12月19日 21:09
> papachanさん

「すべてがリズム、すべてがフォーム」
もちろん、使っていただいても結構ですよ。

※ 最近、歳のせいか、周りの若い人たちに何か
明言めいたことばかり、言うようになってきました。
Posted by jbopper at 2007年12月19日 22:30
こんばんは

テンポよく読めて、気持ちがいいです。
そして心に伝わってきます。
シュー、シュー…。シュー、シュー…♪♪
なんだか曲をつけて、歌にできそうですね。
Posted by hajihadu at 2007年12月21日 21:45
> hajihaduさん

お褒めの言葉ありがとうございます。
そうですね。歌詞にもできるかもしれませんね。
(いつか、やってみようかな?)
Posted by jbopper at 2007年12月22日 14:22
おお、なんとjbopperさんも出していたのですね。
読んだ時にリバーランズスルーイットを思い出しました。今日見ようかな・・・
Posted by 吉多呂さん吉多呂さん at 2007年12月24日 11:10
> 吉多呂さん

コメントありがとうございます。

私の狙っていたリバーランズスルーイットの雰囲気を
感じていただけたのなら、書き手冥利に尽きます。
Posted by jbopper at 2007年12月24日 12:58
 
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