The River (DVDレビュー)

jbopper

2015年02月08日 19:05



確か海外ネット通販で何かを買ったついでに入手した、このDVD。
米国ミシガン州のAu Sable川のお話。アメリカのフライフィッシャーの
中には、ここをFFの聖地と呼ぶ人たちも多いようです。(川の規模は違い
ますが(全長200km!)、日本の湯川や忍野みたいな感じでしょうか?)



そのビデオの中で気に留まって、「う~ん」と唸ったのが、この言葉…

"Every cast is indicative of an opportunity."
「それぞれのキャストはチャンスを暗示する。」

…という直訳では、どうしてもしっくり来ません…

最初に聞いた時に感じたその言葉の意味を探して、いくつか意訳を
試みて、やっと…

 『キャスティングの一振り一振りは、幸運の可能性を秘めている。』

そう、こんな感じで近いかもしれません。

フライフィッシングでは、キャストする一振り一振りに、可能性があります。
いつ魚が出るかはわかりません。でも、その一振り一振りを大切にして、
何十回、何百回振ったその中のたった一振りに、大きな幸運が待っている
かもしれないのです。…そう、そういう意味を感じて感動したのでした。

さて、もう少しだけ、このDVDのレビューをば…
「The River (by Robert Thompson)」は、オーセーブル(Au Sable)
川のフライフィッシングに関する作品なのですが、いわゆる普通の
「釣りDVD」とはちょっと趣が異なります。

普通の釣りDVDなら、釣りの達人が出てきて、その川でどんな釣りが
できるかを超人的なテクニックを使って、ヒットシーンを含めて、バシバシ
釣り上げて、どうしたら釣れるかを解説する…みたいなものになりがちなの
ですが、この作品は、あくまでオーセーブル川を中心に置いて、その川の
環境、歴史、伝統、釣り人、釣りなどを、この川に寄り添ってきた人々の
視点から、様々な角度で紹介しています。

語りたいのは、あくまで川のことであって、この川がどんな川で、過去、そして
現在の釣り人達はこの川とどう関わり、何を工夫し、どうやって環境を保つ
努力をしたり、そして、楽しんだりしているのかを紹介しています。有名な
「トラウト・アンリミテッド」の設立や、地元釣り人によるNPOが川を守るために
工場や企業と戦う話では、この川がいかに人々を突き動かしたかも分かりま
すし、ゆっくり流れるオーセーブルならでこそ生まれたリバーボートや、この
川に一目ぼれして家族で移住してきて始めた有名なFFロッジの話など、
この川とその釣りににまつわる伝統が当たり前のことのように紹介されます。

この作品は、オーセーブルという川が今も昔も多くのフライフィッシャー達に
大きな影響を与え、彼らと一緒に流れてきたことを語り掛けてくれます。

もちろん、この2時間の作品には、四季折々のフライフィッシングシーンも
しっかり紹介されていて、多種多様な水生昆虫を育むこの川ならではの多くの
ヒットシーンが、作品を通してちりばめられています。1年に一度のドレイクの
大量ハッチに集まる釣り人達、日々そして支流ごとに替わる盛期のマッチ・
ザ・ハッチの釣り、大物ブラウンを狙って夕暮れから明け方にまで及ぶイブ
ニングというよりナイトフィッシング…どれもこれもエキサイティング!

ただ、それらはこの作品のメインというより、一般の釣り人たちのそうした
「フライフィッシングの実物」を見せることによって、この川と人々との関わ
りの根底にあるものを見せる「演出」のようにも思えます。

作品の最後の方で、ある人が…

 "I am not sure what I would be doing now if I had not
  found this river... I am not sure if it didn't find me?"

『 もし、私がこの川を見つけていなかったら、今頃何をしていただろう?
 もし、この川が私を見つけていなかったら、どうなっていただろう…』

ひとつの川が多くの人々と社会をも動かす… この作品を見て感じました。

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※ 日本語版は発売されていないようですが、amazon.comの通販
  ページはこちらです。(本家サイトですが、このDVDは日本にも
  送ってくれるようです。もしご興味があれば、どうぞ。)

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